“破壊的イノベーション”で新規事業創出に挑む
まずは、R&D本部のミッションと主な事業内容を教えてください。
3年前の2021年、R&D本部は開発本部とDI事業部が合併して誕生しました。開発本部は精算機、受付機、PMSといったUSEN-ALMEXの看板製品の開発を長きにわたり行ってきました。これらの製品は市場で高い評価を受けており、当社の基盤を支えてきた重要な資産です。
一方、DI事業部はその名前の通り、革新的イノベーションを目指して8年前の2016年に創設された部署で、この部署から新しい病院向けソリューションとして「Sma-pa」と「マイナタッチ」が誕生しました。特に、マイナタッチは顔認証と人工知能OCRという先端技術を駆使しており、DI事業部だからこそ生み出せた製品です。
合併後、我々は開発本部がこれまでに開発してきた製品を維持しつつ、それらに革新性を注入することに注力してきました。しかし、これを実現するためにはアーキテクトの変更や開発言語の変更が必要であり、そのための人材育成が不可欠でした。この過程で、採用育成センター(別名Dojo)という組織を立ち上げ、エンジニアのスキルアップに力を入れました。Dojoでの人材育成を進めながら、同時にアーキテクトの変更や開発言語の変更を行ってきたため、開発に時間を要しましたが、それをなんとか推進することができました。
革新的な開発を促進するためのDojoの取り組みにより、エンジニアたちは新しい技術や手法を学び、既存製品の改良と新製品の開発に大きく貢献しています。次のステップとして、プロジェクトマネージャーの強化にも力を入れる予定です。これにより、プロジェクトの進行管理やリソースの最適化を図り、より効率的で革新的な開発を実現していくつもりです。
ロボットや顔認証をビジネスの現場に。
テクノロジーの力でホスピタリティ あふれる社会を実現
最近は、どのような新製品に力を入れていますか?
さまざまな製品の開発に取り組んでいますが、特に注力しているのは、インバウンド需要を受けて開発したホテルフロント業務用のロボットです。日本語のほか英語や中国語、韓国語など全8か国語の表記と、全4か国語の発音に対応し、フロントスタッフ同様の高品質な案内サービスとチェックイン/アウト業務を提供できるよう設計しました。前方と後方の両カメラによる人物認識とゲストの案内誘導も可能です。2024年の9月から大手ビジネスホテルチェーンで実証実験を行う予定で、そのフィードバックを反映して、できるだけ早く実用化できるよう準備を進めています。
この多言語対応ロボットは、深刻な人材不足に直面しているホテル業界の課題解決に大きな役割を果たすだけでなく、成功すれば医療施設などへの横展開も期待できるので、非常にポテンシャルの大きな製品です。これからもさらなる機能向上を図りながら、USEN-ALMEXの看板製品の一つに育てていきたいと考えています。また、次世代ホテル向け精算機にも、このロボットの多言語接客テクノロジーとカメラ画像処理テクノロジーを搭載する予定です。
また、「マイナタッチ」にも引き続き注力していきます。現在はマイナタッチとUSEN-ALMEXの再来受付機の連携機能の開発に力を入れています。保険確認と再来受付が同時にできるということは、ユーザーに多大なメリットがありますし、USEN-ALMEXだからこそできるソリューションです。さらに、次世代マイナタッチのための基礎研究にも取り組んでいます。次世代機では、現在の機能に加えてさらなる精度と操作性の向上を目指しています。これにより、より多くのユーザーにとって便利で安全な製品を提供できるようになります。
そして、マイナンバーカード対応の経験値を活かして、他用途向けのマイナンバーカード対応機器の研究開発も行っています。例えば、医療機関以外の公共施設や民間企業でもマイナンバーカードを利用できるようにすることで、マイナンバーカードの利用範囲を拡大し、利便性を向上させることを目指しています。さらに、国の施策に合わせた対応も重要な課題です。例えば、運転免許証とマイナンバーカードの一体化や、各種資格証明書とマイナンバーカードの一体化といった取り組みにも対応できる製品の開発です。これにより、国の施策に迅速に対応し、ユーザーにとってより便利なソリューションを提供することができます。
ロボット事業に新規参入する企業は多いですが、USEN-ALMEXならではの強みはありますか?
まず、医療機関やホテルなど、システムの専門知識が必要になるために参入障壁が高いとされる業界に強いパイプを持っていることですね。既存事業での実績が評価されている分、新製品の参入ハードルが比較的低いのはUSEN-ALMEXの大きな強みだと思います。これらの業界で求められるサービスロボットは、例えば配膳や掃除ロボットのように設定だけで導入できるプリセットロボットと、人工知能を用いた接客機能と特殊デバイスを備えたカスタムロボットに大別されます。プリセットロボットについてはコストパフォーマンスが一番求められますので、グループ全体での調達力を発揮できると思います。カスタムロボットに対しては、ホストシステムとの連携やユーザーに応じた繊細なカスタマイズも求められるので、USEN-ALMEXは十分に市場で勝ちを取りに行けると確信しています。
自ら学べる環境を整え、
チャレンジングなプロフェッショナル集団を育成
テクノロジーの進化に対応するには、人材の育成が欠かせません。R&D本部ではどのように取り組んでいますか?
R&D本部では独自の研修システムや人事評価制度を導入するなど、優秀な人材の採用と育成に取り組んできました。採用についてはホールディングスの人事部とは別に部内に独自の採用育成センターを新設し、人材募集から選考までR&D本部が主体で行う体制を整えました。年間3,000人くらいのエンジニアを書類選考の対象としており、その中から「これは」と思う人材と面談し、毎年10~15名の人材を採用してきました。
採用時には、自己研鑽への高い意欲とプロ意識を持っているかどうかを見極めるようにしています。というのも、R&D本部の人事教育は「自修」、つまり自主的に学ぶことを前提としているからです。そのために、能力やポジションに応じてさまざまな研修を用意して、自主的な学びをサポートしています。また、自修に必要な書籍は各自が法人向けECサービスで自由に購入できます。人事評価についても、自修の結果に重きを置いています。単に業績に応じた評価をするだけでなく、各グループで先端的な技術課題に挑戦してもらい、その内容に応じた評価を行います。仕事への熱意や向上心、R&D本部のエンジニア文化の醸成に貢献したことを評価する制度を導入しています。こうして自ら学び成長できる環境を整えたことで「やればできる」という自信が一人ひとりに定着し、R&D本部は未経験の新領域にも果敢に挑戦するプロフェッショナル集団へと進化を遂げています。
「パラノイア楽観主義」で、テクノホスピタリティを世界へ
R&D本部の今後の展望をお聞かせください。
しばらくの間は、既存製品のクラウド連携やセキュリティ強化、人工知能との連携、アーキテクトの刷新、ロボットとの連携に注力していく方針です。ただし、最近は社会のニーズも技術の進化も本当に目まぐるしいので、既存の技術に注力しているだけでは3年後、5年後には時代に取り残されてしまいます。そうならないためには、常にアンテナを張って時代を先読みし、新たな技術の習得にどん欲に挑戦していかねばなりません。
IT業界では、時代やニーズの変化をいち早くキャッチするために、積極的な情報収集が重要です。頻繁に海外の取引先を訪問し、その企業からその先へさらに情報網を広げていきます。各企業の開発ロードマップや、どのようなテクノロジーが現在開発中であるかを聞き出します。さらに、その企業の取引先名や取引内容を聞き、もし有名企業やライバルが含まれていれば、業界の動向を察知する手がかりになります。こうした情報収集を通じて、当社も迅速に対応できるように備えます。また単純に海外の街を歩くだけでも、日本にないシステムを見てヒントを得ることができます。
このような情報収集こそが、新しい技術やサービスの源泉です。しかし、新しい技術やサービスに安易に飛びつくわけではありません。「ALMEX WAY」のパラノイア楽観主義(未来に対して非常に積極的で希望を持ちながらも、潜在的なリスクや課題に対しては警戒心を持つという心構え)を実践すべく、新しい技術については、私はCTO(Chief Technology Officer)として慎重な判断を行い、サービスについては社長やボードメンバーと協議します。これからも新領域に果敢に挑み、USEN-ALMEXのミッションである「テクノホスピタリティを世界へ」の実現に向けて邁進してまいります。