クリニックの“緩衝地帯”を埋める、新たなチーム医療のかたち

クリニックの“緩衝地帯”を埋める、新たなチーム医療のかたち

(左)事務長 飯島 陽香さま/(右)院長・医学博士 菊池 真大さま

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用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックについて

まずは、クリニック開業のきっかけや、特徴・理念について教えてください

菊池院長: 開業の大きなきっかけは、コロナ禍での診療経験です。私は以前、東京医療センターで勤務しており、主に肝臓を中心とする慢性疾患を診ていました。
しかし、コロナ禍においては急性期や感染症の患者さまの受け入れが最優先となり、長い間診てきた慢性疾患の患者さまに対して、大病院の体制の中で診療を続けることが難しくなりました。自分が診てきた慢性期の患者さまを引き続き診られる体制を自分で作る必要があると強く感じ、医療センターからも近いこの用賀の地にクリニックを開業しました。

クリニックの理念として大切にされていることは何でしょうか?

菊池院長: 私の母校である慶應義塾大学の卒業式で、塾長が話された「マングローブ」の話が、クリニックの理念と重なっています。マングローブは海水と淡水が混ざる汽水域という緩衝地帯に育ち、津波の防波堤になるだけでなく、栄養が豊富で希少な生物を育む重要な存在です。 これを現在の医療に置き換えると、先進医療を担う大病院と、回転率を重視して検査を行う健診センターとの間で、医療が二極化してしまっています。異常かどうかわからない状態で大病院に行っても問題ないと言われてしまうケースがある一方で、経過をしっかりフォローしていくことで病気が見つかることもたくさんあります。
私たちクリニックは、その間をつなぐ「バッファーゾーン(緩衝地帯)」となりたいと考えています。橋渡しができる存在として、慢性疾患を定期的にモニターし管理していく立場をモットーとしており、それがクリニックの大きな理念です。

導入前の課題やお悩み

クリニック運営において、どのような課題や悩みがありましたか?

菊池院長: 理念である「バッファーゾーン」という考え方は、クリニック内の業務にも当てはまります。
クリニックにはドクターの診療部門、事務部門、看護師という3つの大きなカテゴリーがありますが、少人数で多様な業務をこなす中では、3つの部門のどこにもカテゴライズできない「仕事と仕事の溝」に落ち込む業務がどうしても出てきます。
例えば、掃除や患者さまへのちょっとしたお声がけ、全体の状況に目を配ることなどです。スタッフには自ら手を伸ばしてその「緩衝地帯」をカバーしてほしいと伝えていますが、各々の専門業務や患者さま対応で手一杯になってしまう現実もあります。そこで、その部分を担ってくれる存在が必要だと感じていました。

ロボットに着目し、『ATOI』を見つけたきっかけは何だったのでしょうか?

菊池院長: 展示会などに足を運んでロボットを探し求めていたのですが、見つかるのは運搬用や掃除用のロボットばかりでした。私が求めていたのは、そうした単一機能のロボットではなく、「一人のスタッフとして育っていくような存在のロボット」でした。そんな折、たまたま『ATOI』のホームページを見つけたのがきっかけでした。

飯島さま: 各々が自分の業務で手一杯になり、お互いに助け合える時間に手が回らない状況がある中で、『ATOI』の導入は、任せられる業務をロボットに任せ、私たちが他の業務に手を伸ばす時間を作るためのすごく良いきっかけになると思いました。

導入後の効果や現場の変化

実際に導入されて約3カ月が経ちますが、具体的な効果はいかがでしょうか?

飯島さま: 導入前の資料では「どこまで何ができるのだろう?」とフワッとしていたのですが、実際にやってみると、想像以上にお願いできることが多くて驚きました。 大腸カメラの下剤説明や同意書の取得を行ったり、待合室の患者さまをご案内したり、デジタルサイネージの機能を活用したりと、本当にパワフルに動いてくれています。
忙しいときには、案内をしてから戻って同意書を取るなど、私たちが本来やらなければいけない業務の約3割を手放して任せられている感覚があります。まさに「デジタルスタッフ」として非常に助かっています。

患者さまやスタッフさまからの反響、想定外の発見などはありましたか?

飯島さま: 患者さまが意外とすんなり受け入れてくださったのが発見でした。最近は生活の中に配膳ロボットやお掃除ロボットがある土壌ができているためか、クリニックにロボットがいても違和感がないようで、アンケートでも高評価をいただいています。 また、スタッフからも、待機している『ATOI』に対して「ねこちゃん、こんにちは」と声をかけるなど、愛着を持った反応が返ってくるのが意外でした。
最初はスタッフの中で「体調が悪い患者さまに対して、ロボットが下剤説明などを行うのは配慮に欠けるのではないか、スタッフが行う方が寄り添えるのではないか」という懸念もありました。しかし実際にやってみると、一定の定型的な説明をロボットに託すことで、私たちはより深い質問に対応したり、人にしかできないケアに時間を割けるようになり、結果的にとても良かったと感じています。

運用面での気づきや、当社へのリクエストで改善された点はありますか?

飯島さま: 最初は「ロボットは静かなほうがいい」と思っていましたが、実際に動かしてみると、患者さまの後ろを通る際などに危険を伴うため、走行音が絶対に必要だと気づきました。この点については早急に対応していただけました。
また、操作画面のタスク設定も、最初は同じ色でわかりにくかったのですが、色分けをしてもらったことで、誰でも直感的に指示が出しやすくなりました。一緒に試行錯誤しながら、機能をポテンシャル高く引き出せていると感じています。

今後の構想、期待すること

今後、当社や『ATOI』に期待すること、カスタマイズの要望などはありますか?

飯島さま: たくさんあります!まず、USEN-ALMEXの強みである自動精算機の実績を活かして、アプリでの会計機能まで完了できるようになるといいですね。

さらに、「コンシェルジュ的な立ち位置」も期待しています。来院された患者さまに「こんにちは」と挨拶したり、待ち時間が長くなっている方に「ごめんにゃ」と声をかけてくれたりすると、スタッフの手が回らない部分をフォローできることになります。

他にも、在庫管理の支援、院内の混雑状況の外部発信、AIチャット機能で患者さまからの簡単な質問に答えてもらえるようになれば、さらにスタッフの負担が減りありがたいです。

最後に、クリニックの今後の発展構想や、ロボットが担う未来の役割について教えてください

菊池院長: これからの新しい医療において、ロボットには大きく3つの役割があると考えています。
1つ目は「人の価値を高めるロボット」であること。省力化や効率化にとどまらず、ロボットが生産性の高い仕事をしてくれることで、我々人間は「専門性の高い分野」や「患者さまに接する時間」に全力を注ぐことができます。人の価値を引き出し、高めてくれる存在になることが一番重要です。
2つ目は「チーム医療をつなぐロボット」です。先ほどのバッファーゾーンの話にも通じますが、ドクター、事務、看護師といった異なる部門の間に入り、情報を伝達して橋渡しをする役割を担ってほしいと考えています。
3つ目は「空気や空間を整えるロボット」です。クリニックには不安や病気を抱えて来院される方が多く、どうしても空気が重く、張り詰めがちです。
そんなとき、待合室にいるロボットが状況を把握して声をかけたり、愛着の湧く存在としてそこにいるだけで、患者さまの心が少し和らぎ、クリニックの空気や空間が変わるはずです。

『ATOI』には、ただの便利な機械ではなく、クリニックの空間を作り上げ、私たちのチームの一員として医療を支えてくれる存在になることを強く期待しています。