外来診療での人員配置
医療事務は受付からデータ管理、予約や請求業務、患者対応まで、広範(こうはん)で複雑な業務を担っています。それらを人に依存して属人的に行っています。
一般的な中規模の病院では外来診療を運営するために総合受付、初再診受付、診療科受付、検査受付、会計などに常勤やパートなど50名ほどの人員を配置しているのが現状です。
人材不足の進むなか病院運営を維持し続けるためには、デジタル化が必要となります。
今までも患者さまの動線に合わせ「受付」「呼び出し」「会計」といった業務カテゴリーごとに、「人の代替」という目的で製品の導入を進めてきましたが、それらを一つの線で結ぶ発想にシフトし、業務ごとの部分的な最適化ではなく、患者さまが来院してお帰りになるまでのすべての窓口業務について、ワンストップで全体最適化を考えることが重要となります。
外来診療のデジタル化
(1)プロセスの見直し
多くの病院では再来受付機から外来診療がスタートします。受付後、当月保険証の確認ができていない患者さまについては保険証の確認を行います。
その後受診する診療科受付で受付を行います。ここでは診察室前で待っていることを表すための患者ステータスの変更を行います。その後、診察室に呼ばれ、必要に応じて院外処方箋が発行され診察が終了します。患者さまは会計受付で受付を行い、会計が出来たら自動精算機で支払いをして離院となります。
特に、診療科受付業務を分析すると病院ごとに違いがありますが保険証確認業務が25%、到着受付業務が25%、受付・案内業務が20%となっています。そのほかに予約変更の電話対応20%、文書等の対応10%などがあります。
この外来受付業務を最適化するために、最初に保険証確認を行います。
クリニックでは当たり前となっていますが病院では運用が徹底されていないところが多くなっています。これによりその後の受付での保険証確認は廃止できます。その後、再来受付機で受付を行い、診療というプロセスに変更します。
(2)医事DXソリューションの導入
保険証確認業務、診療科受付業務をデジタル化して配置人員数の削減を図ります。
■再来受付機とマイナ保険証の連携
患者さまは再来受付機で自身のマイナ保険証による保険証確認を行うようになります。マイナ保険証による保険証確認を自分自身で行うことで事務職員の作業はなくなります。
マイナ保険証の運用が今後本格します。今年の12月には健康保険証の発行が廃止され、2026年には公費もマイナ保険証で確認できるようになります。今からマイナ保険証の運用構築を図る必要があります。
■診療費後払い
さらに再来受付機に診療費後払いシステムを導入します。再来受付時に診療費についても後払い宣言を行うことで会計待ちがなく帰宅できるようになります。
■到着受付システム
到着受付も患者さま自身が行います。再来受付機より発行された受付票に記載されているQRコードをスキャナーにかざすことで到着受付が完了します。駅の改札のように簡単な操作で受付することができます。もちろん声掛けが必要な患者さまは受付時に窓口へ誘導されます。
■AI受付案内システム
患者さまが事務職員に用事がある場合、AIコンシェルジュが対応します。画面に声掛けをいただければ内容を理解してAIコンシェルジュが回答いたします。会話は文字に変換されて目視で確認することも可能です。さらに言語を選択することにより外国語を話す患者さまでも対応できます。AIコンシェルジュが対応できない場合には、そのままオペレータにつながれ対応しますので、すべての問い合わせに対して対応が可能となります。
■AI電話予約システム
診療科受付では来院した患者さまだけでなく予約変更などの電話対応を行う場合があります。電話はいつ入電するかわからず、相手のペースに合わせて対応するため受付業務に大きな影響を与えます。AI電話予約システムは予約内容や変更希望日時などをAIが確認しいったん受け取ります。その後、事務職員が余裕のある時間に希望日時を確認し、対応したうえで患者さまに返信を行って完結します。互いに時間の無駄がなく完了することができます。
このように、デジタル化により受付業務のセルフ化や事務職員のセントラル化を実現し、生産性向上を図ります。
おわりに
医事DXが目指すべきゴールは、人材不足の時代をデジタル化によって克服し、誰もが安心して医療サービスを利用できる未来を作ることです。
人材配置を最小限にし、コスト削減とエラー減少を実現すると共に、患者の満足度向上にも注力します。これにより、医業経営の効率化を図り、地域医療の持続に貢献します。
医事DXにご興味のある方は、どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。