お客さまからの心ない言動、どう乗り越える?~みんなが安心して働ける未来のために~

お客さまからの心ない言動、どう乗り越える?~みんなが安心して働ける未来のために~

最近、「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉をよく耳にするようになりましたね。ただの「クレーム」では片付けられない、働く人たちへの暴言や威嚇、無理な要求などが、心に深い傷をつけ、会社の元気まで奪ってしまう、そんな深刻な問題になっています。

かつて日本には「お客さまは神さま」という言葉が広く浸透し、顧客からのいかなる要求にも応えることがサービス業の美徳とされてきました。しかし、この言葉が過ぎると、時に従業員への過度な要求や理不尽なハラスメントを助長する土壌となっていたことも否定できません。

近年では、従業員の権利や尊厳が重視され、サービスを提供する側と受ける側は、互いに尊重し合う対等な関係であるという認識が広まっています。お客さまもスタッフも、同じ社会に生きる「人間」として、互いに敬意を払い、健全なコミュニケーションを築くことこそが、真に質の高いサービスと豊かな社会を創造すると、私たちは考えています。

働く人たちが安心して最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることは、お客さまへの最高のホスピタリティの提供に繋がります。ホスピタリティは、お客さまを大切にする心の表れですが、そのホスピタリティを発揮する従業員自身が大切にされなければ、真のホスピタリティは生まれません。従業員を大切にすることで、従業員がお客さまに対してより一層のホスピタリティを発揮し結果的にお客さまの満足度向上に繋がると、私たちは確信しています。

本記事では、カスハラの定義から、なぜ今これほど注目されているのか、従来のクレームとの違い、具体的な事例、そして企業や従業員がどのように対応すべきかについて深掘りします。そして、当社がこの問題にどのように向き合い、従業員を守り、より良い顧客体験を提供していくのか、その姿勢についてもご紹介します。

カスハラってどんなこと?~その意味と色々なタイプ~

カスハラは、「お客さまからの、ちょっと行き過ぎた困った言動」と私たちは捉えています。正当なクレームとは違い、解決を目的とせず、ただ嫌がらせをしたり、無理な要求を押し付けたりするような行動です。働く人たちの心を傷つけ、仕事の妨げになるような行為です。

カスハラの主なタイプ
暴言・脅し・侮辱 大声で怒鳴る、人格を否定する、脅迫的な言葉を投げかける行為
高圧的な態度 身体的・精神的に強いプレッシャーを与えるような振る舞い
長時間拘束 執拗な電話、対面での居座りなど、業務を妨害する行為
土下座要求・不当な金銭要求 社会常識から逸脱した謝罪や金銭を求める行為
個人的なことへの踏み込み 個人情報をしつこく聞く、SNSで拡散すると脅す行為
性的な言動 セクハラに該当する発言や不適切な言動
差別的な言動 人種・性別・国籍などに基づく差別的な発言
SNS等での誹謗中傷の示唆 インターネット上で悪評を広めるとほのめかす行為

職種別に見るカスハラの具体的な例

私たちUSEN-ALMEXは、数多くのサービスを提供しています。私たちのようなサービスを提供する企業では、以下のような場面でカスハラに直面する可能性があります。


コールセンターでの電話応対におけるカスハラの例
長時間続く執拗なクレーム 「担当者を出せ」「責任者と話すまで電話を切らない」など、何時間も電話を占領する行為
暴言・人格否定 「お前みたいな無能なオペレーターに話しても無駄だ」「馬鹿か」など、人格を傷つける発言
脅し・威嚇 「会社に乗り込むぞ」「SNSに晒してやる」などの脅し文句で無理な要求を押し通そうとする行為
個人情報の詮索 オペレーターの名前、部署、年齢、住んでいる場所などを執拗に聞き出そうとする行為
性的・差別的な言動 性的な発言や、性別・国籍など特定の属性を差別するような発言

営業の顧客対応におけるカスハラの例
面会強要・長時間拘束 契約や商談と関係のない理由で会うことを無理強いしたり、商談後に長時間引き留めたりする行為
個人的なことへの踏み込み 仕事と無関係な連絡先(個人SNSなど)を無理に聞く、休日に呼び出す、私的な誘いを繰り返す行為
暴言・侮辱 営業担当者の知識や能力を過度に否定し、人格を傷つけるような発言
無理な契約内容の変更要求 一度合意した契約内容について、後から一方的に不利な条件変更を執拗に迫る行為
接待の強要 業務時間外の接待や飲酒、不適切な場所への同行を無理強いする行為

技術のメンテナンス対応におけるカスハラの例
作業員への暴言・罵倒 作業の遅れや態度を理由に、大声で怒鳴る、人格を否定するような発言をする行為
作業の妨害・無理な指示 作業中に執拗に話しかける、安全を無視した指示や危険な作業を無理強いする行為
無料対応の強要 契約外の作業や顧客側の不注意によるトラブルであっても、無償対応を強く求める行為
責任転嫁 操作ミスや環境要因によるトラブルを一方的にメンテナンス側の責任と決めつける行為
長時間作業の強要 作業予定時間を過ぎても帰らせず、長時間拘束する行為
個人的なお願い 業務とは無関係な私的作業や依頼を無理に押し付ける行為

これらの行為は、働く人たちの心に大きな負担をかけ、時には仕事が続けられなくなるなり、会社全体のサービスの質を下げてしまうことになります。

昔と今で何が変わったの?~なぜ今、カスハラが注目されるの?~

「昔から理不尽なお客さまはいたよ」という声もありますが、時代は変わりました。今はカスハラ問題は社会問題として受け止められています。2025年6月には労働施策総合推進法が改正され、企業はカスハラ防止のため雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられることになりました(2026年10月1日施行予定)。


視点
会社の意識と
働く人への考え方


「お客さまは神さま」という考え方が強く、働く人が無理な要求にも応えるべきだという風潮が当たり前とされていました。


働く人の心と体の健康、仕事への意欲、長く働いてもらうことが企業の維持存続に不可欠だという認識が広がり、ハラスメント対策は社会的責任の一つと捉えられています。
SNS・インターネットの普及

ひどいクレームが広まる範囲は限定的でした。


SNSやレビューサイトを通じて、事実と異なる情報や行き過ぎた批判が瞬時に拡散し、企業や働く人に大きな影響を与えるリスクが高まっています。
人手不足の状況

比較的働き手が豊富で、誰かが辞めても代わりの人を見つけやすい時代でした。


人手不足が深刻化し、カスハラを理由に離職が起きることが、企業にとって大きな経営リスクとなっています。
法律・ガイドライン

カスハラに特化した法律や明確なルールはほとんどありませんでした。


厚生労働省によるカスハラ対策を義務づける法律が施行予定となり、企業には積極的な対応が求められています。
お客さまの意識

一定の常識や社会的ルールの中で行動するお客さまが多い傾向にありました。


個人の権利意識が高まる一方で、過剰な期待や自分の意見を押し通す行動が見られるケースも増えています。

カスハラが引き起こす、つらい現実

カスハラは、被害を受けた働く人個人だけでなく、会社全体、ひいては社会全体にさまざまな悪影響をもたらしてしまいます。

働く人たちへの影響
心と体のつらさ 強いストレスや不安、眠れない状態が続くほか、うつ病などの心の病や体調不良につながる
やる気の低下・会社への不信感 仕事への意欲を失い、会社に守られていないと感じて信頼を失ってしまう
退職・休職 精神的な負担が大きくなり、退職を選んだり、休職せざるを得ない状況に追い込まれる
仕事の効率低下 集中力が続かず、判断ミスや作業ミスが増えてしまう
会社への影響
会社のイメージダウン カスハラへの対応が不十分だと、企業の評判が傷つき、お客さまが離れてしまう
採用・人材コストの増加 離職率が上がり、新たな人材を採用・育成するためのコストがかさむ
組織全体の士気低下 被害を受けた人だけでなく、周囲の従業員のやる気も下がり、会社全体の生産性が落ちる
法律問題・費用の増加 従業員からの訴訟リスクや、対応にかかる時間・費用が増加する可能性がある

カスハラにどう立ち向かう?~3つのステップで考える対策~

カスハラへの対応は、起こる前、起こっている最中、そして起こった後の3つの段階で、計画的に取り組むことが大切です。

1.起こる前(予防策・準備)

①社内ルール・マニュアルをしっかり作る
カスハラとは何か、どう対応するか、誰に報告するか、きっぱりとした対応の基準(例:暴言や長時間拘束の際は、一定時間で対応を中断するなど)を明確にします。

②働く人たちへの教育・研修
カスハラに関する正しい知識や、初期対応のロールプレイング、記録の大切さなどを学ぶ機会を設けます。
「一人で悩まない」という意識をみんなで共有します。

③お客さまへのご理解のお願い
お店の掲示やウェブサイト、サービス利用規約などで、「ハラスメント行為はご遠慮ください」「働く人たちへのハラスメント行為にはきっぱりと対応します」といったメッセージをはっきりと伝えます。

④相談窓口を作り、みんなに知らせる
働く人たちが安心して相談できる、社内外の窓口(人事部、産業医、外部機関など)を作り、その存在を周知します。

2.起こっている最中(初期対応)

①落ち着いて話を聞き、共感を示す
まずはお客さまの話を落ち着いて聞き、感情的にならず、共感を示すことで相手の興奮を鎮めることを試みます。
ただし、無理な要求にはきっぱりとした態度で臨みます。

②複数人で対応する
できる限り複数人で対応し、状況をしっかり把握し、担当者が一人ぼっちにならないようにします。
対応中に交代することも効果的です。

③きっぱりとした態度と、対応を中断する勇気
暴言、脅し、長時間拘束など、もし対応がエスカレートしてしまったら、「その言動が続く限り、対応を中断させていただきます」と明確に伝え、対応を中断する勇気も必要です。
安全確保のため、必要であれば場所を移動したり、警察への通報も検討します。

④状況をしっかり記録する
いつ、どこで、相手はどんな人か、どんなことを言われたか(一言一句)、誰が対応したか、どんな対応をしたか、などを詳しく記録します。これは、後の法的な手続きや再発防止策を考える上で大切な証拠となります。

3.起こった後(事後対応)

①働く人たちへのケア
被害を受けた働く人に対し、心のケア(カウンセリングや産業医との面談など)をいちばんに考え、提供します。
必要に応じて休職制度の適用や配置転換も検討します。

②何が起きたのかを確認し、二度と起こさないための対策を考える
記録にもとづき、何が起きたのかを詳しく確認し、同じようなことが再発しないための改善策を検討・実行します。

③必要であれば法的な手続きも
悪質なカスハラに対しては、弁護士と協力し、警察に被害届を出したり、損害賠償を求めたりするなどの法的な対応も検討します。

私たちUSEN-ALMEXは、こう考えています!

私たちUSEN-ALMEXは、働く人たちが安心して働き、それぞれの力を最大限に発揮できる環境を整えることが、お客さまへの最高のサービス提供につながると信じています。そのため、カスハラ問題に対しては、以下の具体的な取り組みを進めています。

・「カスハラ対応ガイドライン」を作り、全ての従業員に周知
厚生労働省のガイドラインを参考に、私たちの会社の特性に合わせた「カスハラ対応ガイドライン」を作りました。
https://unext-hd.co.jp/sustainability/customer-harassment.html
カスハラの定義から、初期対応、エスカレートした時の基準、記録方法、起こった後のケアまでを細かく定め、全ての従業員がいつでも確認できるようにしています。

・定期的な従業員研修の実施
新入社員研修に加えて、全ての従業員を対象としたカスハラ対応研修を年2回行っています。専門家を招き、具体的な事例に基づいたロールプレイングを通じて、実際に役立つ対応スキルを身につけられるよう、力を入れています。

・デジタルツールを活用した対応記録の徹底
電話やオンラインサポートでのやり取りを正確に記録し、もし何かあった時のために大切な証拠として残しています。

・相談窓口を作り、匿名でも相談できるように
社内相談窓口(人事部)に加え、外部の専門機関と提携した匿名で相談できる窓口も設けています。働く人たちが安心して相談でき、必要であれば心と体のケアもサポートできる体制を整えています。

・お客さまへのお願いと、一緒に良い関係を築くために
お客さまとの良い関係を築くため、正当なご意見やご要望には真摯に対応いたします。一方、働く人たちの心や体の安全を脅かす行為に対しては、毅然とした態度で対応させていただきます。どうぞご理解とご協力をお願いいたします。

・継続的な見直しと改善
カスハラに関する社内報告を定期的に集計・分析し、ガイドラインや研修内容をこれからもずっと見直し、より良いものにしていきます。働く人たちの声を聞きながら、本当に効果のある対策を進めていきます。

USEN-ALMEXは、テクノロジーを通じてお客さまのビジネスを支援するだけでなく、そのサービスを支える従業員が安心して業務に取り組める環境を創り出すことこそが、本当に価値あることだと考え、カスタマーハラスメント対策に真剣に取り組んでいます。

まとめ:みんなでつくる、心温まる社会へ

カスタマーハラスメントは、一部の心ない行為によって、真面目に働く人たちが傷つき、会社の活動が邪魔される、とても残念な問題です。この問題を未然に防ぐためには、会社が働く人たちを大切にするための対策を講じることはもちろん、お客さま、そして社会全体の温かいご理解とご協力が、何よりも大切です。

私たちUSEN-ALMEXは、テクノロジーを通じてお客さまのビジネスを支援するだけでなく、そのサービスを支える従業員が安心して業務に取り組める環境を創り出すことこそが、本当に価値ある事業につながると考えます。そのため、従業員が安心して働くことができる環境を整え、一人ひとりが最高の力を発揮できるよう必要な措置を講じ、お客さまに最高の価値を届け続けるよう努めています。カスタマーハラスメントのない、より健全で心温まる社会の実現に向け、これからも前向きに取り組んでいきます。